馬具の名前と役割|乗馬で使う基本の道具

馬具とは?

乗馬を始めると、

鞍(くら)
鐙(あぶみ)
頭絡(とうらく)
ハミ

など、普段の生活ではあまり聞かない名前に次々と出会います。

最初は一つひとつ覚えるだけでも大変に感じるかもしれません。

しかし、馬具は名前だけを暗記するよりも、

「どこに使うものなのか」
「何のために使うのか」
「他の馬具とどうつながっているのか」

を一緒に理解すると、ぐっと覚えやすくなります。

馬具とは、馬に乗ったり、馬を扱ったりするときに使用する道具の総称です。

鞍のように馬の背中に使うものもあれば、頭絡やハミのように頭部へ装着するもの、馬の脚を守るプロテクター、騎乗していないときに使う無口など、用途はさまざまです。

そして重要なのは、馬具を単独の道具として見るのではなく、馬とライダーが安全に、快適に騎乗するための一つの組み合わせとして考えることです。

この記事では、乗馬でよく使われる基本的な馬具を、使う場所ごとに整理して紹介します。


まず知っておきたい馬具の全体像

代表的な馬具を一覧にすると、次のようになります。

馬具 主な役割 使用する場所
鞍 ライダーの騎乗を支える 馬の背中
鐙 ライダーの足を支える 鞍の左右
鐙革 鐙を鞍につなぐ 鞍
腹帯 鞍を馬体へ安定させる 馬の胴
ゼッケン 鞍と馬の間に使用する 馬の背中
頭絡 ハミなどを保持する 馬の頭部
ハミ 手綱からの合図を伝える一部 馬の口
手綱 ライダーの手と頭絡・ハミをつなぐ 頭部〜ライダーの手
プロテクター 馬の脚を保護する 馬の四肢
無口 馬を引く・つなぐときに使う 馬の頭部


こうして見ると、馬具は大きく、

鞍まわり
馬の頭部
馬の脚
騎乗していないとき

に分けると理解しやすくなります。

ここから、それぞれを詳しく見ていきましょう。


鞍まわりで使う馬具

騎乗するとき、馬の背中周辺では複数の馬具を組み合わせて使用します。

中心になるのが鞍で、その周囲に鐙、鐙革、腹帯、ゼッケンなどがあります。

鞍|馬とライダー双方に関わる中心的な馬具

**鞍(Saddle)**は、馬の背中に装着し、ライダーが騎乗するために使用する馬具です。

一見すると「ライダーが座るための道具」に見えますが、それだけではありません。

鞍には、

  • ライダーが安定して座る
  • 馬の動きに合わせてバランスを取る
  • ライダーの荷重を馬の背中へ適切に伝える
  • 鐙や腹帯など、周囲の馬具を組み合わせる

といった役割があります。

そして鞍を考えるときに大切なのが、ライダーだけでなく馬にも合っていることです。

ライダーにとって座りやすい鞍でも、馬の背中の形に適しているとは限りません。

反対に、馬に合っていても、シートサイズやフラップなどがライダーの体格に合っていなければ、騎乗しにくく感じることがあります。

つまり鞍は、馬とライダーの双方から考える必要がある馬具です。

鞍の種類や各部の名称、フィットについて詳しく知りたい方は、「乗馬用の鞍とは?」もあわせてご覧ください。

POINT

鞍は「ライダーが座れればよい」ものではありません。

馬の背中へのフィットと、ライダーの体格・騎乗スタイルの両方から考えることが大切です。

鐙|ライダーの足を支える

鞍の左右から下がっている、足を乗せる部分が鐙(Stirrup)です。

鐙は、

  • ライダーの足を支える
  • 騎乗中のバランスを助ける
  • 障害飛越などで姿勢を支える
  • 脚の位置を安定させる

といった役割を持っています。

シンプルな金属製の鐙だけでなく、踏面が広いもの、重量や素材に特徴があるもの、安全性に配慮した構造を持つものなど、現在はさまざまな種類があります。

また、鐙を選ぶときは鐙単体だけを見るのではなく、実際に履く乗馬ブーツとのサイズバランスも重要です。

小さすぎれば足が窮屈になり、大きすぎれば足元が安定しにくくなることがあります。

鐙のサイズや踏面、安全性などについては、「乗馬用鐙の選び方」で詳しく紹介しています。

鐙革|鞍と鐙をつなぐ

鞍と鐙をつないでいるベルト状の馬具が鐙革(Stirrup Leather)です。

鐙革には、鐙を鞍から吊り下げる役割があり、穴の位置を変えることで鐙の長さを調整します。

鐙の長さは、ライダーの体格だけではなく、

  • 騎乗する競技
  • 乗り方
  • 馬
  • ライダーの脚の使い方

などによっても変わります。

例えば、障害飛越では比較的短めに調整することが多く、馬場馬術では脚を長く下ろすため、より長い設定になることがあります。

鐙革は一見シンプルですが、左右の長さが揃っているか、革や縫製に傷みがないかなど、定期的な確認も大切です。

腹帯|鞍を馬体へ安定させる

腹帯(Girth)は、鞍の左右から馬の腹部を通して装着し、鞍を馬体へ安定させるための馬具です。

鞍だけを馬の背中へ置いても、それだけでは騎乗中の動きに対して十分に安定しません。

そこで腹帯を使用し、鞍が大きくずれないようにします。

ただし、

「緩いと危ないから、とにかく強く締めればよい」

というものでもありません。

馬の体型や腹帯の形、素材、鞍との組み合わせなどを見ながら、適切に装着する必要があります。

騎乗前だけでなく、馬が動いたあとに状態を再確認することも大切です。

ゼッケン|鞍と馬の間で使う

ゼッケン(Saddle Pad)は、鞍と馬の背中の間に使用するパッドです。

主な役割には、

  • 馬の汗を受ける
  • 鞍を汚れから守る
  • 馬体と鞍の間に使用する
  • 製品によって通気性や吸湿性などを補う

といったものがあります。

カラーやデザインが豊富なので、乗馬用品の中でもスタイルを楽しみやすいアイテムです。

ただし、ゼッケンは厚ければ厚いほどよいわけではありません。

馬場用・障害用の形の違いや、サイズ・素材については、「乗馬用ゼッケンの選び方」も参考にしてください。


馬の頭部で使う馬具

次に覚えたいのが、馬の頭部に使う馬具です。

特に、

頭絡
ハミ
手綱

は、それぞれ独立しているように見えて、実際には一つの組み合わせとして使われています。

頭絡|馬の頭部に装着する

頭絡(Bridle)は、馬の頭部へ装着する馬具です。

頭絡には、

  • 項革
  • 額革
  • 頬革
  • 鼻革
  • 喉革

など、複数のパーツがあります。

そしてハミや手綱などと組み合わせて使用します。

頭絡は「馬の頭に付けばよい」というものではありません。

馬によって頭の形や大きさは異なるため、各パーツが不適切な位置にないか、締まりすぎていないかなどを装着するたびに確認することが大切です。

頭絡を構成する各パーツやフィッティングについては、「頭絡とは?」で詳しく紹介しています。

ハミ|合図を伝えるコミュニケーションの一部

ハミ(Bit)は、馬の口に装着し、頭絡・手綱と組み合わせて使用する馬具です。

ハミを見ると、

「馬を止めるための道具」

という印象を持つ方もいるかもしれません。

しかし、ハミだけで馬を動かしたり、止めたりするわけではありません。

ライダーは、

  • 脚
  • 座り方
  • 体重の使い方
  • 手綱

などを組み合わせて馬へ合図を伝えます。

ハミはそのコミュニケーションを構成する一つです。

そしてハミには、

  • 形
  • 太さ
  • 素材
  • ジョイント
  • リングの形状

などさまざまな違いがあります。

ここで大切なのが、単純に、

「このハミは強い」
「このハミは弱い」

だけで判断しないことです。

同じハミでも、馬との組み合わせや装着、ライダーの手綱の使い方によって伝わり方は変わります。

ハミの構造や種類、選ぶときの基本的な考え方については、「乗馬用ハミの種類とは?」も参考にしてください。


POINT

馬具の作用は、道具だけで決まるとは限りません。

ハミをはじめとする馬具は、馬へのフィットや装着方法、ライダーの使い方まで含めて考えることが大切です。


手綱|ライダーの手と頭絡をつなぐ

手綱(Reins)は、頭絡・ハミ側からライダーの手元へ伸びる馬具です。

ライダーは手綱を持ち、馬とのコンタクトを保ちながら騎乗します。

製品によって、

  • 革
  • ラバー
  • 布系素材
  • 滑り止め
  • 幅
  • 厚み

などが異なります。

手が小さい人と大きい人では持ちやすい太さが異なることもあり、グローブとの組み合わせによって感覚が変わる場合もあります。

そのため手綱も、

「頭絡に付いていれば何でも同じ」

ではなく、騎乗スタイルや好みに合わせて考えることができます。


馬の脚を守る馬具

プロテクター|運動中の脚を保護する

馬の脚へ装着する馬具の一つがプロテクター(Horse Boots)です。

運動中に馬自身の脚同士が接触したり、障害物などと接触したりする可能性を考え、用途に応じて使用されます。

プロテクターにも、

  • 前肢用
  • 後肢用
  • 腱周辺を覆うタイプ
  • より広い範囲を覆うタイプ

などさまざまな形があります。

ただし、プロテクターも単に「脚を覆えばよい」ものではありません。

サイズが合っているか。

適切な位置に装着されているか。

砂や汚れが挟まっていないか。

締めすぎていないか。

使用前後に確認することが大切です。


騎乗していないときに使う馬具

無口|馬を引く・扱うときに使う

無口(Halter / Headcollar)は、騎乗時の頭絡とは異なり、馬を引いたり、扱ったりするときに使用する頭部用の馬具です。

リードロープなどを取り付けて使用します。

乗馬クラブでは、

  • 馬房から馬を出す
  • 洗い場へ移動する
  • 手入れをする
  • 必要な場所へ馬を連れていく

といった場面でよく目にします。

初心者にとっては、頭絡より先に触れることも多い馬具でしょう。

見た目が頭絡に似ている部分もありますが、基本的には用途が異なります。

頭絡=主に騎乗時
無口=主に馬を引いたり扱ったりするとき

と整理すると、最初は覚えやすいです。


馬具を選ぶときに大切な3つの視点

馬具の名前が分かるようになったら、次は「どう選ぶのか」という疑問が出てきます。

細かな選び方は馬具によって異なりますが、基本となる考え方は共通しています。

1.馬に合っているか

馬が身につける馬具で最初に考えたいのが、その馬に適切に合っているかです。

馬は一頭ずつ、

  • 体格
  • 背中の形
  • 頭の形
  • 脚の太さ
  • 筋肉の状態

などが異なります。

同じ「FULL」「COB」などのサイズ表記でも、すべての馬へ同じように合うとは限りません。

また、馬の体型や筋肉の状態が変化すれば、以前と同じ調整が常に適切とは限りません。

そのため、

「前回と同じ穴だから大丈夫」

ではなく、使用時の状態を見る習慣を持つことが大切です。

2.用途に合っているか

馬具には、それぞれ想定されている用途があります。

例えば鞍でも、

障害鞍
馬場鞍

では形が異なります。

ゼッケンも使用する鞍によって形が変わります。

プロテクターや手綱なども、目的によって適した仕様が異なる場合があります。

だからこそ、

「人気の商品だから」
「見た目が好きだから」

だけで判断するのではなく、

何のために使うのか

を先に考えることが重要です。

3.正しく装着できているか

どれほど良い馬具でも、装着が適切でなければ本来の役割を十分に果たせない場合があります。

騎乗前には、

  • 左右が正しいか
  • 位置がずれていないか
  • 締まりすぎていないか
  • 緩すぎないか
  • 傷みや破損がないか

などを確認します。

分からない場合は、自己判断せず、乗馬クラブのインストラクターなどに確認しましょう。


高価な馬具なら良いとは限らない

馬具は価格帯の幅が非常に大きい用品です。

数千円程度のものから、鞍のように数十万円以上になるものまであります。

価格が高い製品には、

  • 使用する素材
  • 革の品質
  • 縫製
  • 金具
  • 設計
  • 調整範囲
  • 製造方法
  • ブランドのものづくり

など、価格に反映される要素があります。

しかし、

高価=すべての馬に適している

という意味ではありません。

馬具でより重要なのは、

使用する馬やライダー、目的に合っていることです。


初心者は馬具をすべて自分で揃える必要がある?

乗馬を始めたばかりの方が、この記事に出てきた馬具を見て、

「これを全部買わなければいけないの?」

と不安になる必要はありません。

一般的な乗馬クラブでは、クラブ所有馬に使用する鞍や頭絡などが用意されていることも多く、初心者が最初から馬具一式を自分で持つ必要がない場合があります。

まず自分で用意するものとしては、

  • ヘルメット
  • 乗馬ブーツ
  • グローブ
  • キュロット

など、ライダー自身が身につける用品から検討するケースが一般的です。

必要なものは利用するクラブやレッスン内容によって異なるため、購入前に確認すると安心です。

これから自分の乗馬用品を揃える方は、「乗馬初心者が最初に揃えたいもの」もあわせてご覧ください。

さらに、

ヘルメットやブーツ、グローブなどを含めた用品全体の選び方は、「乗馬用品の選び方」で詳しく紹介しています。


馬具は定期的に状態を確認する

馬具は、一度購入すれば永久に同じ状態で使えるものではありません。

特に革製品は使用する中で、

  • 汗
  • 水分
  • 砂
  • 泥
  • 摩擦

などの影響を受けます。

使用後は汚れを落とし、素材に合った方法で手入れすることが大切です。

また、

革に大きなひび割れがないか
縫い目が傷んでいないか
金具が変形していないか
ベルト類が極端に薄くなっていないか

なども確認します。

美しい状態を保つためだけではなく、安全に使い続けるための点検という視点も大切です。


馬具を知ると、馬装も理解しやすくなる

馬具の名前と役割が分かると、乗馬クラブで行う馬装も理解しやすくなります。

例えば、

ゼッケンを置く。
鞍を載せる。
腹帯を装着する。
鐙を確認する。
頭絡を装着する。

という一連の作業も、それぞれの馬具の意味を知ると、

「なぜこの順番なのか」
「なぜこの位置を確認するのか」

を考えながら行えるようになります。

最初からすべてを完璧に覚える必要はありません。

まずは、

名前 → 使う場所 → 役割

の順で少しずつ理解していくのがおすすめです。


よくある質問

馬具とはどんな道具のことですか?

馬に乗ったり、馬を扱ったりするときに使用する道具の総称です。鞍、鐙、腹帯、頭絡、ハミ、手綱、ゼッケン、プロテクター、無口など、用途に応じてさまざまな馬具があります。

乗馬初心者は馬具をすべて購入する必要がありますか?

最初から鞍や頭絡などをすべて揃える必要がない場合も多くあります。利用する乗馬クラブによって用意されている用品が異なるため、まず必要なものを確認し、ヘルメットやブーツなど自分が身につける用品から検討すると分かりやすいでしょう。

頭絡と無口は同じものですか?

用途が異なります。頭絡は主に騎乗時にハミや手綱などと組み合わせて使用します。一方、無口は馬を引いたり、手入れをしたりするときに使用することが多い馬具です。

馬具はサイズが合っていれば使えますか?

サイズ表記だけで判断せず、実際の馬へのフィットや装着位置、用途まで確認することが大切です。同じ表記サイズでも製品や馬の体型によってフィット感が異なる場合があります。

馬具はどのくらいの頻度で点検すればよいですか?

使用するたびに大きな傷みや汚れ、金具、縫製などを確認する習慣を持つのがおすすめです。異常や装着について分からないことがある場合は、使用前にインストラクターなどへ確認しましょう。



まとめ|名前だけでなく「役割」まで知ろう

馬具には、それぞれ名前と役割があります。

最初は聞き慣れない言葉が多くても、

鞍まわり
馬の頭部
馬の脚
騎乗していないとき

というように分類すると、少しずつ理解しやすくなります。

そして馬具を覚えるときに大切なのは、名前だけではありません。

どこに使うのか。
何のために使うのか。
馬に適切に合っているか。
他の馬具とどう組み合わせるのか。

そこまで理解できるようになると、普段の馬装や騎乗を見る目も変わってきます。

馬具は、人と馬がともに時間を過ごしてきた中で形づくられてきた道具です。

一つひとつの役割を知ることは、単に用品の知識を増やすだけではなく、馬との向き合い方や馬術そのものをより深く知ることにもつながります。

次に乗馬クラブへ行ったときには、いつも使っている鞍や頭絡、鐙を改めて見てみてください。

何気なく使っていた一つの馬具にも、形や位置、役割に理由があることが少しずつ見えてくるはずです。

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